加熱式タバコは、紙巻きたばこと比べて健康面や環境面でのメリットがあるとされていますが、近年、たばこ税の対象となり、値上げが続いています。
なぜ加熱式タバコは増税されるのでしょうか?
また、増税によって加熱式タバコの市場や消費者にどのような影響が出ているのでしょうか?
この記事では、加熱式タバコの増税の理由と影響について解説します。
加熱式タバコとは
加熱式タバコとは、たばこやたばこを含むものを燃焼させずに加熱して、たばこの成分を吸引するための製品です。
加熱式タバコには、たばこを加熱する専用のデバイスと、たばこを入れるカートリッジが必要です。
加熱式タバコの代表的なブランドには、アイコス、グロー、プルームテックなどがあります。
加熱式タバコの特徴は、紙巻きたばこと比べて、発がん性物質や有害物質の含有量が低いことです。
また、煙や臭いが少なく、周囲に迷惑をかけにくいこともメリットとされています。
加熱式タバコは、紙巻きたばこの代替品として、喫煙者の健康増進や受動喫煙防止に貢献すると期待されています。
加熱式タバコの増税の理由
加熱式タバコは、2018年10月からたばこ税法の対象となりました。
それまでは、加熱式タバコはパイプたばこと同じ区分に分類されていましたが、製品の特性を考慮して、新たに加熱式タバコの区分が設けられました。
加熱式タバコの税率は、重量と小売価格に基づいて、紙巻きたばこの本数に換算されます。
換算方法は、以下の式で計算されます。
この換算方法は、2024年10月までに5段階で見直される予定です。
見直しの目的は、加熱式タバコと紙巻きたばこの間の税負担水準の適正化です。
加熱式タバコは、紙巻きたばこよりも有害物質の含有量が低いという点で、健康面でのメリットがあると考えられますが、それでもたばことしての性質を持ち、ニコチン依存や健康被害のリスクがゼロではありません。
そのため、加熱式タバコにも適切な税負担を課すことが必要だと考えられます。
加熱式タバコの増税の影響
加熱式タバコの増税によって、加熱式タバコの市場や消費者にはどのような影響が出ているのでしょうか?
ここでは、以下の3つの観点から考察してみます。
– 消費者の行動の変化
– たばこ産業の競争の変化
市場規模の変化
加熱式タバコの市場規模は、増税によって縮小する傾向にあります。
厚生労働省の「令和2年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、習慣的に喫煙している人のうち、加熱式タバコを吸っている人の割合は、2020年には男性で25.9%、女性で23.8%でしたが、2021年には男性で24.4%、女性で22.5%に減少しました。
また、加熱式タバコの販売数量も、2020年には約1,000億本でしたが、2021年には約900億本に減少しました。
加熱式タバコの市場規模の縮小の理由としては、以下のような要因が考えられます。
– 新型コロナウイルス感染症の影響による喫煙習慣の変化
– 電子たばこやニコチンガムなどの代替品への移行
加熱式タバコの値上げは、消費者の購買意欲を減退させる可能性があります。
特に、加熱式タバコに移行した理由の一つとして、紙巻きたばこよりも安いというコスト面のメリットがあった人にとっては、値上げは大きな負担となるでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症の影響によって、在宅勤務や外出自粛などの生活環境の変化が起こりました。
これによって、喫煙習慣も変化し、喫煙量が減ったり、禁煙に挑戦したりする人も増えたと考えられます。
さらに、加熱式タバコの代替品として、電子たばこやニコチンガムなどの製品も市場に登場しています。
これらの製品は、加熱式タバコよりも安価で、ニコチン依存の解消や禁煙のサポートに役立つとされています。
これらの製品に魅力を感じる消費者もいるでしょう。
消費者の行動の変化
加熱式タバコの増税によって、消費者の行動も変化しています。
ここでは、以下の2つの観点から考察してみます。
– 喫煙場所の変化
購入方法の変化
加熱式タバコの購入方法も、増税によって変化しています。
ここでは、以下の2つの観点から考察してみます。
– コンビニエンスストアの利用
オンラインショップの利用は、増税によって増加する傾向にあります。
オンラインショップでは、加熱式タバコのデバイスやカートリッジなどの製品を、店舗に行くことなく、自宅や職場などに配送してもらえます。
また、オンラインショップでは、会員登録やポイント制度などのサービスを利用して、割引や特典を受けることができます。
例えば、IQOSのオンラインショップでは、初回購入時にデバイスを割引価格で購入できたり、専用たばこスティックを定期的に購入すると送料無料になったりするサービスがあります。
また、グローのオンラインショップでは、デバイスやカートリッジのほかに、ニコチンガムなどの製品も購入できます。
オンラインショップの利用は、増税によってコストを抑えたり、便利さを求めたりする消費者にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
一方、コンビニエンスストアの利用は、増税によって減少する傾向にあります。
コンビニエンスストアでは、加熱式タバコの製品を手軽に購入できますが、値上げによって購入意欲が低下する可能性があります。
また、コンビニエンスストアでは、加熱式タバコの製品の種類や在庫が限られていることも、利用の障壁となるでしょう。
例えば、IQOSの専用たばこスティックは、全国のセブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキ、ポプラなどのコンビニエンスストアで購入できますが、店舗によっては取り扱っていない場合や、品切れになる場合があります。
また、グローのカートリッジは、全国の主要なたばこ取り扱い店にて購入できますが、店舗によっては取扱い製品ならびに、在庫状況が異なります。
コンビニエンスストアの利用は、増税によって価格や品揃えに不満を感じる消費者にとって、魅力が低下するでしょう。
喫煙場所の変化
加熱式タバコの喫煙場所も、増税によって変化しています。
ここでは、以下の2つの観点から考察してみます。
– 屋外の喫煙場所の増加
屋内の喫煙場所は、増税によって減少する傾向にあります。
屋内の喫煙場所とは、レストランやカフェ、居酒屋などの飲食店や、ホテルやオフィスなどの施設内に設けられた喫煙スペースや喫煙室のことです。
屋内の喫煙場所は、加熱式タバコの喫煙者にとって、快適に喫煙できる場所として重要ですが、近年、受動喫煙防止の観点から、屋内の喫煙場所の規制が強化されています。
例えば、2020年4月に施行された改正健康増進法では、原則として、飲食店や学校、病院などの公共の場での喫煙が禁止されました。
ただし、加熱式タバコについては、喫煙室の設置や喫煙可能な席の指定などの条件を満たせば、喫煙が許可される場合があります。
しかし、喫煙室の設置や喫煙可能な席の指定は、経営者や管理者にとって、コストや手間がかかることです。
そのため、屋内の喫煙場所を減らしたり、廃止したりする場合も多くなっています。
屋内の喫煙場所の減少は、増税によって加熱式タバコの利用価値が低下する要因となるでしょう。
一方、屋外の喫煙場所は、増税によって増加する傾向にあります。
屋外の喫煙場所とは、街中や公園などの屋外に設けられた喫煙所や喫煙コーナーのことです。
屋外の喫煙場所は、加熱式タバコの喫煙者にとって、屋内の喫煙場所がない場合や、屋内での喫煙が禁止されている場合に、喫煙できる場所として重要です。
屋外の喫煙場所は、加熱式タバコの普及に伴って、増加する傾向にあります。
例えば、JTが運営する「CLUB JT」では、全国の喫煙所や喫煙可能なカフェや居酒屋などを、現在地や行先のマップから検索できるサービスを提供しています。
また、IQOSやグローなどの加熱式タバコのブランドも、自社の製品を使用できる屋外の喫煙場所を設置したり、提携したりしています 。
屋外の喫煙場所の増加は、増税によって加熱式タバコの利用価値を高める要因となるでしょう。
まとめ
この記事では、加熱式タバコの増税の理由と影響について解説しました。
加熱式タバコの増税の理由は、加熱式タバコと紙巻きたばこの間の税負担水準の適正化です。
加熱式タバコの増税の影響は、市場規模の変化、消費者の行動の変化、たばこ産業の競争の変化などが考えられます。
市場規模の変化では、加熱式タバコの需要が減少する傾向にあります。
消費者の行動の変化では、購入方法や喫煙場所が多様化する傾向にあります。
たばこ産業の競争の変化では、加熱式タバコのブランドや製品の差別化が進む傾向にあります。
加熱式タバコの増税は、加熱式タバコの市場や消費者に大きな影響を与えています。
加熱式タバコの喫煙者は、増税によって自分の喫煙習慣や予算を見直す必要があるでしょう。
加熱式タバコのメーカーや販売者は、増税によって自分の製品やサービスの価値を高める必要があるでしょう。
加熱式タバコの増税は、加熱式タバコの未来にとって、チャレンジでもあり、チャンスでもあります。
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